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「アリ」か「ナシ」かといえば、現在のコーチは、「アリ」である。例えば、店頭で目に止まったあるバッグの値段が、自分の自由になる金額より、数千円高かったとする。買うか買わないか迷う。そこで、「ナシ」の場合、買わずにあきらめるが、「アリ」の場合、「来週の昼ご飯をお弁当にすれば買える」という計算をする。「アリ」と「ナシ」の差異は、たいていそんなことであり、しかしそれが、とても重要なことでもある。
その「アリ」の世界にコーチはいる。それは、コーチの商品の中にある、「伝統」とバランス良く存在する「流行」が、時どきの空気感に非常にマッチしているからであると思う。
コーチという名前からは、伝統、職人、皮工芸という言葉が持つ匂いと、同じような匂いが漂ってくる。質のよい、シンプルな皮のバックや小物。そして、商品たちの「検印」のように「コーチ」のロゴが押されている。
ニューヨークに本店を持つコーチの歴史は、1941年、マイルズ・カンとその妻リリアンが伝統を重んじた、落ち着きある皮革製品を作ろうと、小物の製造を始めたところに幕を開ける。以後、その商品のラインアップは、様々な皮小物からハンドバッグなど、広がりを見せていくが、一貫して「伝統」を重んじる姿勢は変わらなかった。
しかし一方、近年のコーチは、これまであえて作らなかった布製やビニール製のトートバッグや、モノグラム柄など、「伝統のコーチ」にはなかった、いわば「流行のコーチ」を感じさせる商品が、ヒットを生んでいる。そう、つまりこのヒットこそが、「アリ」のコーチの最も明らかな証明である。
古く、また新しいもある柄。個性的で、しかも多くの人々に好かれる形。捉えがたく扱いがたいこの「流行」というものも、コーチのしっかりとした「伝統」のグラウンドに立つからこそ、絶妙のバランスを保ち、「アリ」のバッグとして、人々の肩を飾るのである。
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